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(2011年12月~)
SFマガジン掲載書評(1995~2001)
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創元SF文庫の歴史 History of Sogen SF Bunko
第4回 『星を継ぐもの』からSFマークの終焉まで(1973年9月~1991年10月)
今回は、1973年から1991年にかけての創元推理文庫SFマークを概観する。
1973年9月より創元推理文庫は新たな作家別番号を導入し、SFマークにはすべて600番台の作家固有番号と作品番号が振り直された。『火星のプリンセス』は601-1といった具合で、ここから得られる五ケタの番号(60101)がISBNの一部となり、これが現在の創元SF文庫でも続いている。最新(2016年9月時点)の『霧に橋を架ける』は76401である。
それはさておき、1970年代、地底世界シリーズ全7巻(バローズ/1973年~1977年)、アダム・リース・シリーズ全4巻(ジャック・ヴァンス/1973年~1975年)、クワナール・シリーズ全3巻(テッド・ホワイト/1975年~1978年)、ルーンの杖秘録全4巻(マイクル・ムアコック/1975年~1980年)反地球シリーズ6巻(ジョン・ノーマン/1975年~1988年/未完)と、相変わらずシリーズものの刊行が続く一方、60年代に比べると新作の刊行が途絶えていた創元SFであったが、1978年、映画『スター・ウォーズ』公開に伴うSFブームの影響を受けてか、ニーヴン&パーネル『神の目の小さな塵』(1978年)、クリストファー・プリースト『スペース・マシン』(1978年)『ドリーム・マシン』(1979年)といった英米での新作や話題作もすぐに訳されるようになってきた。
中でもジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』(1980年)は刊行されてすぐ話題となり、翌年の星雲賞を受賞している。月面で五万年前の宇宙服を着た人類の遺体が発見された。彼の正体は一体何なのか? 科学的な瑕疵を抱えながらも、謎解きのスケールの大きさで読者の圧倒的な人気を博し、現在に至るまで版を重ねている本書は(2016年時点で97刷! その後100刷に達し、新版が刊行されている)、『火星のプリンセス』に並ぶ創元SFの顔であると言っていいだろう。
アンソロジーの系譜も途絶えたわけではなく、深見弾編による非英語圏SFアンソロジーが『ロシア・ソビエトSF傑作集』(1979年)『東欧SF傑作集』(1980年)の2点、50年代SFの粋を集めたメリル編『SF ベスト・オブ・ザ・ベスト』(1976年~1977年)、フレデリック・ポール編のSF雑誌〈ギャラクシー〉傑作選『ギャラクシー』(1988年)、ファーマン&マルツバーグ編のテーマ別オリジナル・アンソロジー『究極のSF』(1980年)など、優れたアンソロジーが刊行されている。
さて、ここで創元推理文庫SFならびに創元SF文庫の刊行点数グラフを見ていただきたい。
一目見てわかるのは、1983・84年と88年、この3年の刊行点数の多さである。83・84年については、デュマレスト・サーガ全31巻(E・C・タブ/1983年~1989年)とリチャード・ブレイド・シリーズ全14巻(ジェフリー・ロード/1983年~1985年)が毎月のように刊行されていたためであり、88年に多いのはダーコーヴァー年代記22冊(マリオン・ジマー・ブラッドリー/1986年~1988年)があったためである。80年代前半にはSFブームの余波がまだあり、後半にはバブル景気による好況の波がSF界にも影響を与えたということだろう。
80年代前半には、2冊で終わった〈甦れ、センス・オブ・ワンダー〉、アメリカのイラスト入り叢書をそのまま持ち込んだ〈イラストレイテッドSF〉(もともとハードカバーで出版され、それを文庫化していったもの)といった不発の企画が目立ち、点数は多いものの、文庫自体の質はそれほど高くなかったように思われる。しかし、後半になると、ハインラインのジュヴナイルをまとめて刊行したり、サンリオSF文庫亡き後、ディックの再刊並びに未訳作品刊行を積極的に進めたり、といった意欲的な企画が目につくようになる。ファンの間で人気の高かった作家バリントン・J・ベイリーが、『時間衝突』(1989年)で創元初刊行を果したこともうれしい事件であった。文庫巻末に掲載されていたコラム「文庫データ・ボックス」や別冊として挟み込まれた「紙魚の手帖」(1983年~1988年/全41冊)といった付録の充実ぶりも特筆すべきだろう。
こうした中、M・P・キュービー=マクダウエル『アースライズ』(1991年8月30日発行)を最後に、創元推理文庫SFマークは姿を消す。SFマーク発刊からちょうど28年。創元推理文庫から分類マークがいっせいになくなり、背表紙の色でジャンルを区分するようになるのに合わせての突然の終焉であった。特に創元社からの告知はなかったと記憶している。筆者のように、創元SFマークを読んで育ち、このマークに特別な愛着を持っていた者にとっては、いささか急で、淋しい別れであった。私が創元SFをすべて集め、記録をきちんと残しておこうと思ったのは、これがきっかけである。その成果を『創元推理文庫SFリスト』(1997年/自費刊行/絶版)としてまとめ、現在の「SF文庫データベース」へとつながっていくわけだ。経過を記すと長くなるので、結論だけ書いておくと、創元SFマークとして刊行された作品は全部で403冊(火星シリーズ新訳版を別カウントすれば409冊)ということになる。
1991年11月からは、新たに創元SF文庫がスタートした。メリッサ・スコット『遙かなる賭け』、ディック『暗闇のスキャナー』の同時刊行(1991年11月29日発行)であった。
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