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SF文庫データベース
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(2011年12月~)
SFマガジン掲載書評(1995~2001)
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創元SF文庫の歴史 History of Sogen SF Bunko
第5回 創元SF文庫24年の流れ(1991年11月~2015年12月)
いよいよ最後は、1991年から2015年まで、24年間の創元SF文庫を一気に振り返る。グラフを再び見てほしい。
点数的にはほぼ10冊前後で2006年まで推移するが、2007年からは日本SFの再録が始まり、点数がアップする。しかし、それも一時的な増加に留まり、再び10冊程度に戻る。日本SFを入れて10冊なので、海外SFの数はこの時期(2009年~2013年)激減。このまま翻訳SFは消滅するのかとも思われたが、2014年から突如増加に転じ、ここ数年は年間15冊というハイ・ペースで海外SFが刊行されている。日本SFと合わせてではあるが、年間20冊に達したのは、1988年以来のことである。ぜひとも今後もこのペースを維持してほしい。
翻訳物から紹介していくと、、シリーズものとしては、ハンディキャップを背負った帝国軍人マイルズを主人公とした〈ヴォルコシガン・シリーズ〉20冊(ロイス・マクマスター・ビジョルド/1991年~/刊行中) 今やTVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者として名高いマーティンが中心となって企画された超能力ヒーローもの〈ワイルド・カード〉3巻(1992年~1994年/未完)、川を挟んで世界が男性優位社会と女性優位社会に分かれる設定がユニークな〈黒き流れ〉全3巻(イアン・ワトスン/1994年)、アン・マキャフリーの名作『歌う船』(1984年)の設定を使って展開されるシリーズ〈歌う船〉6冊(1994年~1999年)などが新たに刊行された。1999年からは、〈火星シリーズ〉の合本版(1999年~2002年)、〈レンズマン〉の新訳(2002年~2004年)、ハヤカワ文庫SFからの移籍となる〈キャプテン・フューチャー全集〉(2004年~2007年)など、既存のシリーズを新たなパッケージで刊行したものが目立つようになる。
アンソロジーでは、翻訳家の中村融が名アンソロジストとして現在に至るまで大いに活躍している。彼が編集したものとして、SFホラー傑作選『影が行く』(2000年)、映画化作品を集めた『地球が静止する日』(2006年)、時間SF傑作選『時の娘』(2009年)『時を生きる種族』(2013年)、宇宙生命SF傑作選『黒い破壊者』(2014年)など5冊が刊行された。
単独作では、何と言っても、サンリオSF文庫からの再刊8冊を含むP・K・ディックの作品14冊が、『暗闇のスキャナー』(1991年)から『ヴァルカンの鉄鎚』(2015年)まで、継続して刊行されたことが大きな収穫だろう。これでディックのSF長篇はすべて翻訳されたことになる。他には、光速に近づき止まらなくなった恒星船を描いた『タウ・ゼロ』★(1992年)、ロボットと意識の問題を追究したB・J・ベイリーの二部作『ロボットの魂』『光のロボット』(1993年)、幻のアルバムが存在する架空世界を扱ったルイス・シャイナー『グリンプス』(1997年)、認識論と物理学が激しくぶつかり合うグレッグ・イーガンの第一長篇『宇宙消失』☆(1999年)及び作者の最高傑作と評される『万物理論』★☆(2004年)、キム・スタンリー・ロビンソンの火星SF三部作(ただし、第三部は未完)『レッド・マーズ』★(1998年)『グリーン・マーズ』(2001年)、何者かによって時間封鎖された地球の運命を描くロバート・チャールズ・ウィルソン『時間封鎖』★☆(2008年)、中世ドイツでの異星人との邂逅を描いたマイクル・フリン『異星人の郷(さと)』★☆(2010年)、意識と知性の問題に鋭く切り込んだピーター・ワッツ『ブラインドサイト』★(2013年)、元艦船の人工知能が主役となったアン・レッキー『叛逆航路』★(2015年)など、こうして並べてみるだけでも、24年の間に収穫作・話題作が多数刊行されてきたことがわかるだろう。
(文中の★印は星雲賞受賞作、☆印は「SFが読みたい!」ベストSF第1位を示す)
日本SFは、2007年2月に堀晃の長篇『バビロニア・ウェーブ』がほぼ20年振りに再刊/文庫化されたのを皮切りに、田中芳樹『銀河英雄伝説』10冊・外伝5冊、菅浩江『ゆらぎの森のシエラ』、川又千秋『幻詩狩り』など既に評価の定まった80年代作品の再刊/文庫化が続いた。再刊作品は、鏡明、新井素子、夢枕獏、眉村卓、山野浩一といったベテラン勢のクラシックが多かったが、2010年にはTVドラマ化に合わせて、山本弘の比較的新しい作品である『MM9』(単行本は2007年刊)が文庫化された。怪獣による被害が自然災害のように存在する世界を描いた傑作であり、シリーズ2作が続けて文庫化された。また、2008年から、前年発表された日本SF短篇から大森望と日下三蔵が収録作を選んだ〈年刊日本SF傑作選〉が毎年刊行されている。2010年からスタートした、創元SF短編賞受賞作もこのアンソロジーに収録されており、この賞からは、松崎有理「あがり」、宮内悠介「盤上の夜」、酉島伝法「皆勤の徒」といった優れた作品が生まれた(創元日本SF叢書としてそれぞれを表題作とした短篇集が刊行され、文庫化されている)。当初の狙い通りだったのかはともかく、結果として創元SF文庫の日本SF路線は大いに成功し、ジャンルの隆盛に一役も二役も買うこととなった。
以上、創元SF文庫の歴史を概観してきた。2015年末の段階で、創元SF文庫は274冊刊行されている。創元推理文庫SF403冊と合わせれば677冊だ。今年中か来年には700点に達するだろう(※2016年末に700点を達成し、2024年9月までで818点を刊行)。早川書房の一社独占を許さず、二社が競合することによって、ジャンルの多様化と発展を促すという意味からも、創元SF文庫の果たす役割は大変大きいと言える。翻訳SFと日本SFの二足の草鞋を履くこととなった創元SF文庫のますますの活躍を期待したい。(おわり)
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