SF Magazine Book Review



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1999年7月号

『ノストラダムス秘録』C・スターノウ&M・H・グリーンバーグ編

『ディスコ2000』サラ・チャンピオン編

『復讐の船』S・M・スターリング(アン・マキャフリイ原案)

『フリーダムズ・チョイス―選択―』アン・マキャフリイ

『リンク』ウォルト・ベッカー


『ノストラダムス秘録』C・スターノウ&M・H・グリーンバーグ編

(1999年3月30日発行/大瀧啓裕・他訳/扶桑社ミステリー/705円)

 ついにやって来ました、一九九九年七の月。それまでに読み切らなければ面白くない賞味期限付きアンソロジーが、この『ノストラダムス秘録』である。ノストラダムスの残した予言詩を、十一名の作家が腕によりをかけてホラーやSF風の作品に仕立てあげたものだが、気になるのは、何と言ってもあの「空から恐怖の大王が降ってくる」の『予言集』第十巻第七十二番の解釈であろう。本書収録の作品によれば、アイダホ州の鉱山で発見されたある物体が爆発することによって「恐怖の大王」がもたらされるということだが……。これは期待に反してスケールが小さく、不満が残った。収録作品は、予言詩を過去の史実に当てはめて描いたものと、予言が近未来に実現するものに大別されるが、最も楽しめたのは、予言が本当だと信じて核戦争を起こそうとするコンピュータを別の解釈で説得するR・ワインバーグ「黙示録の四行詩」。予言自体が曖昧なのだから、一元的に解釈してしまうのではなく、解釈の多様性を楽しむ、この手の作品がもっとあっても良かったのではないだろうか。

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『ディスコ2000』サラ・チャンピオン編

(1999年4月14日発行/小川隆・他訳/アーティストハウス/2000円)

 賞味期限付きアンソロジーをもう一冊。音楽ジャーナリスト、サラ・チャンピオン編の『ディスコ2000』は、英国新人作家アンソロジー『ディスコ・ビスケッツ』(早川書房刊)に続く第二弾で、一九九九年十二月三十一日に起きる出来事をテーマにしたアンソロジーだ。世界中から人々が消えていくパット・キャディガンの「世紀末大騒動」から始まって、ポール・ディ・フィリポらSF畑のアメリカ人作家も加えた十五名が参加しており、読み応えは十分。アムステルダムのゲイ・カップルの日常を描いたもの、レイヴをしながらオーストラリアまで来た二人組が時間のループにとらえられてしまうものなど、あくまでも現代英米の若者文化を扱った作品が多いが、中にはクローン人間の暴走を描いたジョナサン・ブルック「アイデンティティ」なんて過激な作品もあるので要注意。圧巻はフィリポの「パーティ! パーティ!! パーティ!!!」で、これは、時空を超えてパーティに出現し続けることになった主人公を描いた傑作だ。他にも、朝食の様子を偏執狂的に細かく描写したニール・スティーヴンスンの「クランチ」、キリスト教徒が蟻に食べられてしまうロバート・アントン・ウィルスン(イルミナートゥス三部作の作者)の「ダリの時計」など奇作怪作だらけの本書は、SFファン必読の書と言えるだろう。

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『復讐の船』S・M・スターリング(アン・マキャフリイ原案)

(1999年3月26日発行/嶋田洋一訳/創元SF文庫/820円)

 マキャフリイ関連が二冊。S・M・スターリングの『復讐の船』は『戦う都市』の続編で《歌う船》シリーズ最終巻。宇宙ステーション・シメオンの養子となったジョートは、宇宙のならず者コルナー人に誘拐されたベセル人アモスを捜索するため、愛機〈ワイアル〉を駆って敵地に赴く……。今までと違い筋肉と脳のコンビは登場しないが、ジョートと〈ワイアル〉の乗組員が協力して事件を解決するという構図は従来のまま。友情あり、ジョートと伝説の大物スパイとの恋愛ありで、読者を飽きさせない。

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『フリーダムズ・チョイス―選択―』アン・マキャフリイ

(1999年4月30日発行/公手成幸訳/ハヤカワ文庫SF/900円)

『フリーダムズ・チョイス―選択―』は、三部作の第二弾で、キャテン人によって未開惑星に送られた地球人らが、惑星を開拓しながらキャテン人への反乱を着々と進めていく。キャテン人を支配するエオス人や、謎の存在〈ファーマーズ〉が姿を現し、物語はいよいよ佳境へ。このシリーズは、マキャフリイの作品にありがちな嫌味さが薄く、結構面白く読むことができる。

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『リンク』ウォルト・ベッカー

(1999年3月31日発行/酒井伸昭訳/徳間書店/1800円)

 ウォルト・ベッカーの『リンク』は、古代文明の謎を扱った壮大な冒険SF。中央アフリカで異星人の化石と遺物を見つけた人類学者らが遭遇する人類創世の秘密とは……。アクションの連続で一気に読ませるが、肝心の謎は余りにもストレート過ぎて物足りない。いかにもハリウッド映画向きの物語である。

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